忍者の記憶術~不忘の術

忍者が使っていた記憶術

ほとんど知られていませんが、日本には忍者が使っていた独自の記憶術があります。いわば「忍者の記憶術」

で、忍者の記憶術とはどういう方法かとえいば、

  • 数字を人の体や食べ物に置き換える方法・・・数字置換法(ペグ法)、基礎結合法
  • 文字を置き換える方法・・・文字変換法(変換記憶術)
  • 体に傷を付けながら覚える方法(不忘の術・・・感覚刀痕術

こういうことになります。
右側は現代の記憶術の名称になります。

で、忍者の記憶術のうち「置き換える術」は原理的にいって西洋の記憶術と同じですね。まったく同じです。

それにしても日本独自に記憶術が考案されていたというのが興味深いですね。

ちなみに忍者とは、室町時代から江戸時代にかけて、スパイ活動、破壊工作、奇襲攻撃、ゲリラ攻撃、情報戦、暗殺を生業にしていた存在ですね。陰で謀を企み、敵を貶めるダークヒーローです。

そんな忍者が「記憶術」を使っていたといのは意外と知られていません。

忍者の変換記憶術

で、忍者が使っていた「数字変換法」「文字変換法」といった「変換記憶術」は、西洋の記憶術そのものです。

おそらく日本の忍者の記憶術でも「ペグテーブル」と似た一覧表や、基礎結合法における「基礎表」が使われていたと思います。これらの表は、いわば「暗号解読」ですからね。

ちなみに数字変換法はドイツのウィンケルマンが1648年に公開しています。が、当時、日本は江戸時代の初期です。1639年に日本は鎖国しますので、ウィンケルマンの数字変換法が日本に伝わった可能性は極めて低いのではないかと思います。

また人の体に置き換えるのは「基礎結合法」ですし、食べ物に置き換えるペグテーブルを使うのは「変換記憶術」です。これらが西洋から輸入されたというよりは、日本で独自に考案されたとみたほうが自然ですね。

日本で独自に記憶術が考案されたわけです。そういえば日本には、関孝和に代表される和算もあります。和算は微分・積分をも含む世界最高水準の数学でしたからね。忍者の記憶術も、おそらく世界最高水準にあったのではないかと妄想してしまいます^^;

ちなみに変換記憶術や基礎結合法のことはこちらでくわしく説明しています。
変換法記憶術~変換・分解・置換・外連想の4つのテクニックからなる方法数字変換法記憶術~歴史年号・パスワード・生年月日など数字の暗記に最適基礎結合法記憶術~一番大事な基本テクニック

不忘の術は痛みを使う記憶術

で、忍者の記憶術の中でも異色なのが「不忘の術(ふぼうのじゅつ)」です。

「不忘の術」は忍者が使用した記憶術の中でも特異な記憶術ですね。

で、「不忘の術」に相当する記憶術は、実は西洋にはありません。まったくの日本独自のオリジナル記憶術です。

で、「不忘の術」とは、覚えたいことに対して「痛み」というインパクトと結びつけて覚える記憶術です。具体的にいえば小刀で指に傷を付けて、その痛みを使って暗記すべきことを覚える記憶術ですね。

サディステックといいますか、自虐的な記憶術なんですが^^;

記憶術2500年の歴史においても、痛みをトリガーとする記憶術は日本だけの方法であり、日本独自のやり方です。なので「特異」なんですね。

不忘の術とは感覚刀痕術

ちなみに日本の記憶術の中興の祖である「渡辺剛彰」氏は「不忘の術」を「感覚刀痕術」といっています。
感覚刀痕術~五感を使った記憶術

通常、記憶術では「インパクトのある映像」を使いながら「覚えたい物事」を覚えていきます。

たとえば「ネコが通天閣に衝突した(通天閣が倒れた)」というイメージは、インパクトがあって決して忘れなくなります。
連想力【記憶術のやり方基本】~イメージをつなげていく能力

記憶術(西洋の記憶術)は、こうした衝撃的なイメージと絡めて覚えたいことを暗記します。で、これが記憶術なんですね。

ところが「不忘の術」はイメージを使わず、感覚(痛み)を使います。「ナイフで指を切る」といった超絶な痛み。これと覚えたいことを結びつけます。

不忘の術もイメージを使っている?

しかし「不忘の術」でも、おそらく「イメージ」を使っていると思います。

どういうことかといえば、たとえば「尾張藩の家臣・成瀬が金100両横領」ということを覚える場合、「尾張藩の家臣・成瀬が金100両を持って逃げようとしたが斬り殺した」という具合にイメージで覚えながらも、あわせて「小刀で指を切る」といった超絶な痛覚と重ねて二重のインパクトによって覚えたのではないかと推察します。

なぜなら「痛み」という感覚だけで覚えるのは、なかなか難しいからですね。

しかし渡辺剛彰氏は、著書の中で「痛みを使った覚えることができる」といっていますので、人によっては痛覚を使って強く覚えることができるんでしょうね。

渡辺剛彰氏が述べる不忘の術

「不忘の術」に関することは渡辺剛彰氏の著書にあります。

記憶術の秘訣は感覚に刀の傷跡を残すようなものだ。つまりインパクトのある感覚。
「新しい記憶術―電話番号から司法試験まで」

忍者には、証拠を残さないために、いかに紙と筆を用いないで、命令、密書、収集した情報を覚えるかといったノウハウがすでにあったようだ。そこでオヤジは図書館でかたっぱしから忍術の本を読みあさり、忍術の記憶法の一つに、自分の手の指を利用して覚えるやり方を見つけたのであった。その方法とは、指の一本一本に筆で印を付けたり、小刀で傷を付けて、それらの指に報告すべき事柄を結びつけて覚えるというう方法だった。
「ワタナベ式記憶術」

渡辺剛彰さんは、中学二年生のときに父親から記憶術を教わっています。その記憶術の中に「忍者の記憶術」があったといいます。

渡辺さんは、それを「感覚刀痕術」と命名しています。感覚刀痕術は、覚えることを感覚に結びつけて忘れなくする記憶術として紹介しています。

山田雄司氏が述べる不忘の術

あと歴史学者の山田雄司氏も、その著書「戦国 忍びの作法」で「不忘の術」について述べています。

絶対に忘れてはいけない重要情報の場合に、忍者が頼ったのが「不忘の術」である。これは情報のことを思い浮かべながら、刀などで自分の体に傷をつけるという術だった。
「戦国 忍びの作法」

忍者が記憶術を使っていた目的・理由

このように忍者は記憶術を使っていたわけですが、忍者が使っていた目的は、

  • 「暗号」にして他の人にはわからないようにするため
  • 覚えにくい「数字を覚える」ため
  • 重要事項を確実に覚えるため

といったことだったといいます。
スパイ工作活動をする忍者らしい使い方です^^;

結局、情報戦(インテリジェンス)の中で使っていたということですね。

もっとも西洋でも中世の時代には、カバラ、ヘルメス主義、新プラトン主義といったオカルトや秘匿学問において、他人に知られないために使われていました。本質は、日本の忍者の使い方と同じですね。

けれども西洋では弁論術、キリスト教神学や学問で使われました。日本では、記憶術が学問で使われてこなかった歴史もあります。それ故に、日本では「記憶術は怪しい」といったイメージがつきまとっているのかもしれませんね^^;

伊賀流忍者博物館

ちなみに三重県伊賀市にある「伊賀流忍者博物館」では、忍者の記憶術を展示しています。
⇒伊賀流忍者博物館

「伊賀流忍者博物館」は伊賀忍者の資料館ですが、ここでは「忍者の記憶術」も紹介しているといいます。大変興味深いですね。

で、「伊賀流忍者博物館」の説明によれば、

記憶術
情報を集める役割を果たし忍者は、人よりも記憶力が必要であった。秘密を守るために、人の目に触れる文字には表せなかったからだ。そのため忍者は、覚えにくい数字は、人のからだや食べ物に置き換える連想法で記憶した。また絶対に忘れたくない最も重要なことは、そのことを思い浮かべながら、自分の体に傷を付けるという方法(「不忘の術」)で覚えた。

とあります。
忍者の記憶術について端的に述べていますね。

まとめ

このように忍者は、

  • 他の人にはわからない「暗号」にする
  • 覚えにくい「数字を覚える」
  • 人のからだに置き換えて覚える
  • 食べ物に置き換えて覚える
  • 自分の体に傷を付けて覚える(「不忘の術」)

ということで記憶術を使っていたということですね。

ほとんど知られていない「忍者の記憶術」。
日本独自の記憶術。
和算に並ぶ独創性の高い日本の文化の一つですね。

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