ラモン・ルルの記憶術はマインドマップのルーツ【13世紀】

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ラモン・ルルの記憶術

1235年にギリシアに生まれた「ラモン・ルル(ラモン・リュイ)」という修道士も記憶術を生み出しています。

ラモン・ルルは「ライムンドゥス・ルルス」「レイモンドス・ルルス」とも言い、キリスト教・フランシスコ会の修道士でした。彼はトマス・アクィナスと同年代の人物で、神秘学(プラトン主義)に傾倒しています。

ちなみにトマス・アクティナスは「ドミニコ会」の修道士。ラモン・ルルは「フランシスコ会」。二人はライバル関係にもなります。

ラモン・ルルは、修道士だったため、シモニデスのような古典的記憶術である弁論術から記憶術を考案したのではなく、新プラトン主義(哲学)的な観点から記憶術を発案しています。

ルルスの記憶術書には
・小さき術
・大いなる術
・記憶増強法
・知性の上昇と下降についての書

という著作物があります。

ラモン・ルルの記憶術は、覚えたいことの頭文字を利用した「頭文字法」的な記憶術です。

また「ルルの輪」「学問の樹」と呼ばれる記憶術を生み出しています。

神秘家ラモン・ルルは反復記憶を推奨

ラモン・ルルは神秘学家として知られていますが、一方で「記憶術本」を残しています。「記憶増強法」という書の中で、彼は記憶術や記憶に関して言及しています。

ルルは、記憶を助けるための食べ物や薬物には否定的です。またイメージを使った古典的記憶術の場所法(ローマンルーム法)よりも、繰り返して覚える「反復記憶」を推奨していました。

ただし単に反復学習して覚えるというのではなく、イメージを使ったやり方を併用しています。それがキーワードを絵の中に埋め込んだり、文字をイメージ化する方法です。

で、このやり方が、後の「マインドマップ」になります。トニー・ブザンが考案したと言われる「マインドマップ」ですが、実は、ラモン・ルル「記憶増強法」「学問の樹」が元ネタになっています。
マインドマップと記憶術【トニー・ブザン】

テンプレートを使った記憶術の元祖

ラモン・ルルの記憶術のコンセプトは、9つから成る「神の品格」というテンプレートを使用する点にあります。これは神の徳を表す「9つの品格」に対して、9個のアルファベットをあてて使うという記憶術です。具体的にいえば、

  1. ・・・B
  2. 偉大・・・C
  3. 永遠・・・D
  4. ・・・E
  5. 叡智・・・F
  6. 意志・・・G
  7. ・・・H
  8. 真理・・・I
  9. 栄光・・・K

といった対応となるテンプレートです。
次の項目で解説しますが、ラモン・ルルの記憶術は、9つの「神の品格(徳)」を、9文字に対応させて、その9文字を概念化して使うやり方です。

文字をイメージ化して絵に埋め込む記憶術

ルルの記憶術は、アルファベット文字の一つ一つに、意味やイメージを持たせて暗記する方法とも言えます。つまり文字にイメージを付与する記憶術ともいえます。

また絵やイメージの中に、重要なキーワードを配置したり埋め込んで、絵画として概念や事項を覚えようとします。具体的なルルの方法は、次の通りです。

上昇と下降の階段

まず「上昇と下降の階段」というやり方です。このやり方は「知性の上昇と下降についての書」に著されています。知識や情報を「上昇と下降の階段」を描いた絵画の中に整理して、また結びつけて覚えます。

この絵では、各階段に記憶すべき事項が、キーワードとして埋め込まれています。

学問の樹

また「学問の樹」と称された絵では、まさに学術的なキーワードが木の中に埋め込まれています。

ラモン・ルルはこうした手法を使って、キリスト教的世界観や概念を覚えるためのテクニックとして使用していました。

しかしラモン・ルルの方法は、暗記対象をイメージ化するといった古典的記憶術とは違い、キーワードを絵の中に組み込んで記憶を助けるといった手法です。

このラモン・ルルの方法は現代の「マインドマップ」になります。

マインドマップのルーツはラモン・ルル

ラモン・ルルが考案したこの「学問の樹」と「記憶増強法」は、トニー・ブザンの「マインドマップ」のルーツです。
マインドマップと記憶術【トニー・ブザン】

現代では、マインドマップは情報整理の有効な手段・ツールとして世界中で使用されています。が、元のルーツをたどるとラモン・ルルの「学問の樹」「記憶増強法」になるわけですね。記憶術がルーツということです。

実際、マインドマップの開発者であるトニー・ブザンは、記憶術の大家です。彼が記憶術からマインドマップを連想し考案したのも自然なことですね。記憶術の歴史を知れば容易に浮かび上がってくる事実でもあります。

ラモン・ルルの記憶術的方法は、現代ではマインドマップとなりましたが、記憶術と併用すれば暗記と記憶の効果が高まることは言うまでもありません。なぜなら記憶術の便を助けるために作られていると思われるからです。

ちなみに、ラモン・ルルのやり方を応用したのが、21世紀になって日本人の松平勝男氏が考案した「ユダヤ式記憶術」になります。

ユダヤ式記憶術では、「文字」の代わりに「図形」を使います。

図形のテンプレート(生命の樹)を使うことで、ラモン・ルルの記憶術は洗練され、また汎用性が出てきているため、受験や資格試験の勉強に活かせる現代記憶術となっています。

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