島田伊兵衛「島田記憶術」は大阪の記憶術【明治28年】

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島田伊兵衛の記憶術

和田守記憶法」が出た明治28年10月に、関西から「島田記憶術」という本が出版されます。
著者は島田伊兵衛という大阪の人です。

島田伊兵衛は明らかに和田守菊次郎を意識していました。彼は大阪から東京に上京し、あえて東京で記憶術の公開パフォーマンスを行います。

和田守と似たようなことを行うわけですね。

大阪毎日新聞に記憶術の公開実演の広告を載せたり、和田守記憶法に対抗意識を燃やします。

パフォーマンスに失敗した島田伊兵衛

しかし島田伊兵衛の公開パフォーマンスは失敗しています。記憶術を使ったものの、記憶の正答率は6~7割だったといいます。

実際、島田本人も東京での公開パフォーマンスは「失敗」だったと述懐しています。

では、和田守記憶法への対抗意識で作られた「島田記憶術」とは一体、どういったものだったのでしょうか。

島田記憶術の中身

島田記憶術は、その著を見ると

  • 数字を容易に記憶する仕方
  • 事柄を数とを結付て記憶する仕方
  • 順序を容易に記憶する仕方

といった方法が基本テクニックになっています。

では具体的に、島田記憶術の基本テクニックについてみてみましょう。

数字を容易に記憶する仕方

「数字を容易に記憶する仕方」とは、数字に該当する「五十音」をあらかじめ当てておく「変換法」のプリミティブ(原始的)なやり方です。

語呂合わせ感覚も入り交じった稚拙な変換法記憶術である感は否めないといったのが率直な感想です。

変換法記憶術~変換・分解・置換・外連想の4つのテクニックからなる方法

事柄を数とを結付て記憶する仕方

また「事柄を数とを結付て記憶する仕方」は、「語呂合わせ」と「イメージ」を使用した素朴な記憶術です。

記憶術にしては発展途上な感がします。

順序を容易に記憶する仕方

そして「順序を容易に記憶する仕方」は、こちらはいわゆる「イメージ」と「座(記憶の宮殿)」を使った古典的な「場所法記憶術(座の方法、ローマンルーム法)」です。

記憶術・場所法のやり方を図でわかりやすく解説

しかし、記憶の仕方に甘いところがあり、記憶の定着に疑問があるやり方になっています。

ちなみに島田伊兵衛は「座(記憶の宮殿)」を「目当」と言っています。

記憶術講座「島田記憶学会」

島田伊兵衛は、「島田記憶学会」と称する記憶術講座を開きます。これは和田守菊次郎が行ったことと同じですね。

ここでも和田守菊次郎に対抗意識を出しています。

けれども和田守菊次郎よりも費用は安く、半額程度の金額で受講できるものでした。

入会金が1円(現在価値に換算すると2万円)質疑応答が10銭(現在の2千円)特別会員になると月50銭(現在の1万円)の会費といった具合です。

和田守菊次郎、島田伊兵衛は、井上円了に並ぶ明治時代の代表的な記憶術家ですが、その記憶術に稚拙な部分があったことは否定できませんね。またいろいろと問題もあった様子です。

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