ルネサンスの記憶術

記憶術は古代ギリシアやローマから、中世のスコラ哲学を経て、ルネサンス期においても変容を遂げていきます。

 

ルネサンス期における記憶術にもいくつかあります。
ルネサンス期の初期の頃は、スコラ哲学的な記憶術を踏襲したものになっています。

 

たとえばヤコブス・プブリキウスは1482年に「弁論術要綱」を出します。この書には付録として「記憶術論」があり、ここでは記憶する「場」に「架空の場」を使うやり方としての記憶術が紹介されています。

 

この「架空の場」とは、メトロドロスの記憶術のように「宇宙」を利用したものでした。具体的にいえば、月下界、惑星天、恒星天、天宮、楽園といった天宮の世界(キリスト教的世界観)を「記憶の場」に利用して、物事を暗記する方法でした。

 

しかし形式としては、スコラ哲学式記憶術(トマス・アクィナス)のように、地獄と天国の概念を「記憶の場」として利用する倫理的な記憶術と同じやり方になります。

 

ルネサンス期における記憶術の3つの系統

しかしプブリキウスの後に、大体、3系統の記憶術が出てきます(分かれてきます)。

 

一つは、ペトゥルスに見られる、記憶術の大衆化に努めた人物の出現です。宗教的規範から脱却し、世俗的な意味合いでの成功をするために、記憶術の活用と普及に努めました。

 

もう一つは、ヨハンネス・ロンベルヒやロッセリウスといった人らによる、古典記憶術とスコラ哲学記憶術を包括した、それまでに全ての記憶術を体系化したものです。またフランシス・ベーコンら哲学者が学問的な分野で記憶術を使用することの提唱も出てきます。

 

三つ目は、新プラトン主義、ヘルメス主義、カバラといいた神秘学と結びつけて記憶術を使用する人達が出てきたことです。

 

三番目の秘教的・秘学的な世界で記憶術が使用されたことはルネサンス期の特徴にもなっています。

 

ルネサンスの印刷技術が記憶術の使い方を変えた

こうした変化は、ルネサンス期に登場した印刷技術による影響が大きいといわれています。というのも、トマス・アクィナスらが活躍していたスコラ哲学時代までは、およそ物事の伝承には「記憶」か書写といった、相伝的な方法に頼るしかなかったからです。記憶術が重宝されたのも、こうした「伝承文化」があったからです。

 

しかし印刷技術が普及し、書籍が多く出回ると、もはや口伝などによる伝承の必要がなくなります。何冊でも印刷ををすれば良いわけですので、文字化し印刷をすれば、書籍として伝承されていきます。

 

こういう時代的な変化の到来によって、記憶術の使われる機会や場所に変化も出てきました。修道会では、もはや、記憶術を使い、建築物を「記憶の場」として倫理道徳を覚え込ませる必要は無くなり、印刷した書籍と図を見れば、それで事が足りるようになりました。

 

こうして記憶術の使われ方が、ルネサンス期において再び変容していきました。

 

 

ルネサンス期よりもずっと改良され進化した現代の記憶術

 

 

 

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