世界初の記憶術本~ラヴェンナのペトゥルス「不死鳥」【15世紀】

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世界初の記憶術本~ペトゥルス「不死鳥」

ルネサンス期は、記憶術はオカルトの面でも使用され、弁論術やキリスト教神学、学問など様々な方面で使用されます。

記憶術の使い方も多様性を帯びてきた中、記憶術を大衆に普及した人がいます。

それが「ラヴェンナのペトゥルス(Petri Ravennatis)」という人でした。

ペトゥルスは1491年に「不死鳥(Phoenix seu artificiosa memoria)」という記憶術の本を出版します。折しも印刷技術が普及したルネサンスです。

ペトゥルスは、世界初の「記憶術本」を出版します。

世界初の記憶術「ハウツー本」「実用書」です。

ペトゥルスは記憶術で成功できることを喧伝

ペトゥルスは「記憶術を使えば世俗的な成功を収めることができる」といって、記憶術を世に出したようです。記憶術を使えるようになると、記憶力が良くなり、それによって人生に成功できる可能性が高まります。

ペトゥルスは、ここに注目して、「記憶術を成功術」として世界出初めて本にして出版した人になります。

現代の記憶術に通じるコンセプト

ちなみに「成功するために記憶術を使う」という動機は、現代の記憶術でも全く同じです。現代でも「人生に成功する」ために、受験や資格試験での合格、また仕事での成功に記憶術を使うことが推奨されています。

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ちなみに人生に成功するために記憶術を使うことは、決して悪いことではありませんね。むしろ成功するためのテクニックの一つとして記憶術を活用することは望ましいことであります。

なおペトゥルスが、記憶術を「人生の成功」「生活に役立てる」といった実用面に力を入れて普及させた理由には、記憶術が一部のアカデミックな世界(たとえばスコラ哲学など)のみで使用されていた歴史が長かったことへの反動もあったようです。

ペトゥルスは記憶術の達人でもあった

「人生に成功する記憶術」として、世界で初めて本にして出版したのはペトゥルスが最初ということですね。世界初です。

実際、ペトゥルス自身、記憶術を習得していて、歴史上の哲学者らの言葉を300以上、法律の条文を2万以上をも暗記していました。で、その膨大な暗記を披露して大衆を驚かせていたといいます。

ペトゥルスは記憶術の達人でした。しかし見方を変えれば一種の「大道芸」にも映ります。記憶術のスゴさを、パフォーマンスを通して大衆に見せることで、記憶術本の売り上げを狙っていたのでしょう。

ペトゥルスは宣伝も巧みだった

ちなみにこのような宣伝の仕方は現代もさほど変わりがありません。記憶術によって「東大に合格した」とか「司法試験に合格した」というのも同じです。

しかしそうだからといって、決して記憶術を卑下することはありません。

中にはあからさまな宣伝と思われるものもあるかもしれませんが、記憶術は本当に暗記に役立ちますし効果があります。ペトゥルスが記憶術で憶えた膨大な知識は、まさに「記憶術の賜物」になります。これはこれですごいことです。

ペトゥルスの記憶術の使い方は、弁論や宗教といった一部の世界だけで使用するのではなく、「実生活に役立つ記憶術」を広く世に知らしめしたともいえます。記憶術の新しい効能を世間に広めていますね。

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ペトゥルスの記憶術は「座の方法(場所法)」

ところでペトゥルスが広めた記憶術は古典的な記憶術でした。つまり、シモニデス、キケロ、ヘレンニウス、クィンティリアヌスといった「イメージ」と「記憶の宮殿」を利用した「座の方法(ローマンルーム法)」ですね。

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ルネッサンスの時代は、天国や地獄などのキリスト教神学における知識の暗記や、倫理道徳の条項を覚えるために記憶術が使用されていました。

が、ペトゥルスは「実用的な知識や生活に役立つ知識を憶えるための記憶術」として普及させます。ペトゥルスの使い方は、今でこそ「当たり前」です。しかし当時は斬新だったようです。

ペトゥルスの記憶術は「教会を使った場所法」

ペトゥルスは、記憶術の使い方を具体的かつ細部にわたって説明しています。

ペトゥルスのやり方は「教会」を使った「場所法」です。教会を「記憶の宮殿」に使用するとも言えます。

やり方は、次の通りです。

  1. まず教会へ行って、3~4回、教会の周囲を歩く。
  2. その教会のイメージを脳裏に焼き付ける。
  3. 教会のドアを開けて、各部屋を覚え「記憶の宮殿」を設ける。
  4. あとは記憶の宮殿に結びつけて覚えたいことを覚えていく。

といったやり方になります。
このやり方はまさに「場所法」です。現代の記憶術講座でも教えていますね。まったくといっていいほど同じです。

⇒現代の場所法「宮口式記憶術」

ちなみにペトゥルスは、教会を使った記憶の宮殿を10万箇所作ったといいます。10万個の記憶の宮殿を使って10万項目の暗記ができていたようです。すごいですね。

しかしながら場所法は「記憶の宮殿」に尽きることを端的に示しています。これを地で行ったのがペトゥルスだったわけですね。

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記憶の宮殿は人生に成功と繁栄をもたらす

ペトゥルスは、世界で初めて「記憶術を人生の成功に使う」ことを提唱して本を出版しています。

ペトゥルスが開拓した「世俗的な成功」をもたらすための記憶術の使い方は、決して卑俗なものではありませんね。むしろ人生を豊かにし成功へと導く新しい使い方になります。

けれどもペトゥルスの著書を現代においては読む必要はないでしょう。参考程度ならまだしも、今は「現代の記憶術講座」の利用がおすすめです。

なぜなら、現代の記憶術のほうが、種類も多くなり使い方ももっとバラエティに富んでいます。様々な記憶術を習得して適宜、使い分けもしています。ペトゥルス本などの古典をわざわざ読む必要はないでしょう。

「成功するための記憶術」は現代にもあります。いえ、現代では「人生に成功するための記憶術」という立ち位置が主流です。記憶術を有意義に生きていくための手段とて活用。

人生に成功するための記憶術の使い方は有益ですね。ちなみにこちらの記憶術は、記憶術を習得しながら「成功脳」にもしてしまう最新の記憶術です。

⇒宮地式脳トレ記憶術

なおペトゥルスがパイオニアとなった「記憶術を使って人生の成功と繁栄に導く」という実用的な使い方は、その後、ウィンケルマンリチャード・グレーグレガー・ファイネーグといった記憶術の専門家に引き継がれていきます。そうして現代記憶術へとつながっていきます。

ペトゥルスの「不死鳥」は、ルネサンス期に発刊された世界初の成功型記憶術の本です。

世俗の成功を収めたい人向けに書かれた画期的な成功術本とも言えるでしょう。

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