記憶術を完成させたメトロドロス

キケロがローマ時代に活躍していたほぼ同年代に、ギリシアに「メトロドロス」という天才的な記憶術の使い手がいました。

 

 

メトロドロスは哲学者で、ギリシアのトロアス半島出身のスケプシス人だったといいます。キケロとほぼ同年代に生存していたことから、紀元前100年頃の人物であったのでしょう。

 

記憶術の歴史の中において、メトロドロスはほとんど知られていませんが、キケロの「弁論家について」の中では「神的な記憶力を持った偉人」としてメトロドロスが紹介されています。

 

キケロの書によれば、「あたかも文字を蝋版に刻み込むようにして、覚えておきたいと思うことを『イメージ化』し、あらかじめ用意してある場所に書き込みことにしていると(メトロドロスは)語っていたのである」と記されています。

 

メトロドロスは一字一句を正確に記憶する驚異的な記憶力の持ち主だったようです。記憶術の古典書を書いたクィンティリアーヌスは、メトロドロスに対して「彼は自慢屋で山師である」と見下しています。しかしクィンティリアーヌスの言い方は少々ひがみな印象です。

 

ローマ時代の歴史家で百科事典も著したプリニウスはメトロドロスを称讃しています。プリニウスの見解によれば、「記憶術はシモニデスによって発明され、メトロドロスによって完成された。メトロドロスは聞いたことを一語一句違わずに繰り返すことができた」とあります。

 

つまり記憶術は、古代ギリシアのシモニデスが発案し、メトロドロスが完成させたということです。記憶術の代表的古典書「ヘレンニウスへ」はメトロドロスの方法を参照にした可能性があるという指摘すらあります。

 

日本の記憶術の世界では、ほとんど知られていないメトロドロスですが、記憶術を完成させたと言われるメトロドロスの記憶術とは一体、どういうものだったのでしょうか。

 

メトロドロスの占星術的記憶術

メトロドロスの記憶術については、おそらくこのHPが最初に紹介することになるでしょう。

 

メトロドロスの卓越した記憶力は、なんと彼が独自に生み出した記憶術の方法によるものだったといいます。それは「黄道十二星座」を利用した記憶術でした。
占星術とも関連していたとの指摘もあります。

 

実際、メトロドロスの場合は、黄道十二星座(宮)を、さらに分割し、36星座(宮)、360星座(宮)として、これらのハウスを「記憶の場所」として使用していました。

 

この分割は、占星術の世界でよく使われる手法です。ですので、メトロドロス記憶術とは「黄道十二星座・占星術的記憶術」と言ってもよいかもしれません。

 

メトロドロスは、この占星術的な記憶術を使い、完璧な記憶ができたようです。

 

メトロドロスは、黄道十二星座を使用した記憶術を用いていましたが、原理的には「場所法」になります。また「変換法」のテクニックも使用していたようです。

 

変換法は、当時としては興味深い斬新なテクニックであり、書の中では「速記文字の使用」とあります。ですが、この速記文字とは、記憶を素速く行うことのできる「変換表」などのツールを示しているのでしょう。

 

こうした記憶のノウハウは、現代の記憶術にもあります。あらかじめ物事をイメージ化するための「変換法」をメトロドロスは使用していた可能性があります。

 

メトロドロスの興味深い記憶術ですが、記憶術の世界では、ほとんど言及されていません。占星術に通じていた可能性もあり、不思議な人です。

 

もっともメトロドロスの生来の記憶力が抜群に良かったことも推測できます。元々記憶力の良い者が、記憶術を使うことによって、神業的な記憶能力を発揮していたというのが事の真実ではないかと思います。

 

それにしてもメトロドロスは、現代記憶術に通じるノウハウを使用していたと思われます。

 

 

 

 

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