記憶術の歴史

記憶術を使っていたフランシス・ベーコン

フランシス・ベーコン(1561〜1626年)はイギリスの経験主義の哲学者で帰納法を提唱したことでも有名ですね。

 

実は、フランシス・ベーコンは、記憶術を使用していました。
ベーコンが記憶術を使用していたと聞くと、驚く方もいるかもしれませんが、これは本当のことで、ベーコンは記憶術にも言及しています。しかも彼自身が記憶術への深い知識があり、実際に使っていたことも分かっています。

 

ベーコンが記憶術に造詣があったことは意外に思われるかもしれませんが、
たとえば、フランシス・ベーコンの著「学問の進歩」の中で記憶術に対して

「現在の記憶術(ルネサンス期のヘルメス主義的な使い方の記憶術)は改善の余地があるし、無益な誇示のためではなく、有用な目的のために使用されるべきである」
「私にはその技術(オカルト的な使い方)よりも優れたやり方があるように思えるし、また今受容されているものよりも優れたその技術の実際の用い方があると思われる」

と言っています。

 

当時、ルネサンスにおいては、ヘルメス主義や新プラトン主義といったカバラや魔術といったサブカルチャー的な文化が勃興しはじめ、記憶術はこうした怪しくも非科学的な世界で使われもしていました。※詳細こちら

 

ベーコンはこうした非科学的なシーンで使用するのではなく、学問的な分野で記憶術を使用するべきだと言いたかったようです。また、記憶術を魔術やオカルトの道具ではなく、学問等の分野でもっと実用的な使い方をすることを提唱していました。

 

ベーコンが提唱した実用的な使い方とは、古典的な記憶術を使って、哲学などの学問的シーンで必須の事項を暗記するやり方です。つまり、イメージと場を使ったシモニデスやキケロらの記憶術を使い、学問に活かそうとする提唱でした。

 

フランシス・ベーコンはその著「森の森」においては、

「記憶術を験してみると、目に見えるイメージが他の奇抜な着想よりもよく作用することが分かってくる。たとえば「哲学」という単語を記憶したければ、自分自身が「哲学を勉強しよう」と発言しているのを想像するよりも、ある人間がアリストテレスの「自然学」を読んでいる姿を想像するほうが、必ずうまくゆくはずである。想像力が光輝くものではるならば、それは拡張力も大きく、の定着力も強くなる」

と言っています。
ここでフランシス・ベーコンは「『想像の力(イメージ力)』を使うことで記憶の定着を強くすることができる」といった記憶術の真髄を述べています。

 

哲学者の中でも大哲人とも言われるフランシス・ベーコンですが、彼が記憶術を使い、その効果を認めていたことなど、ベーコンと記憶術との関わりは、

 

 K・R・ウォーレス著「フランシス・ベーコンの伝達論、修辞学論」
 W・S・ハウエル著「イギリスの論理学と修辞学」
 パオロ・ロッシ著「普遍の鍵」「フランシス・ベーコン」

 

といった研究書でも明らかにされています。

 

デカルトも認めていた記憶術

記憶術はベーコンが認めていたように、方法序説や演繹法を提唱したことでも有名なフランスの哲学者、ルネ・デカルトも認めていました。

 

デカルトは「思索私記」の中で、ランベルト・シュンゲルという人物の記憶術について言及し、「場」と「イメージ」を利用した記憶術が有益であることを述べてます。

 

ベーコンにしてもデカルトにしても知の巨人である知識人は記憶術を認め、実際に使用もしていました。

 

記憶術への偏見は、現代においても時々見られますが、歴史的に見れば知識を記憶するための効果的な手段として認識されていました。

 

記憶術は元々、弁論家や哲学者が発明した方法ですので、当然といえば当然なのかもしれません。
現代においても記憶術を使用しないのは勿体ないとしか言いようが無いかと思います。

 

 

ベーコン、デカルトとといった知の巨人らも使用していた記憶術